「不安定」な関節と「安定」のある関節

関節の機能を説明する際によく耳にする言葉に
「不安定」と「安定」があります。

 

一般的にこれらの言葉は、対義語として使用されます。

 

「不安定」な関節とは、関節の求心性(お互いを近づける力)を保つことができず、
運動中心すなわち“支点”にブレがある関節をいいます。

 

関節が「不安定」になる原因

関節が「不安定」になる原因として・・・

  • 関節の支点形成に関与する組織の破綻や器質的な緩み
  • 拘縮
  • 筋力の低下
  • 筋肉の収縮スピードの遅延

などが挙げられます。

 

「不安定」な関節と聞くと、
いわゆる緩い関節をイメージすると思いますが、
決してそれだけではありません。

 

関節の一部に拘縮(筋肉や関節包などの柔軟性低下など)があると、
関節周囲の生理的な張力のバランスが崩れ、
“支点”のブレが生じるようになります。

 

このように拘縮に由来する“支点”のブレが
痛みなどの症状と関係していることは非常に多いです。

 

「不安定」な関節を有する症例では
「緩い」「グラグラする」「ズレる」などの自覚症状がみられます。

 

一方「安定」した関節とは、
関節本来の理想的な姿であり、
関節の適正な“支点”がある状態をいいます。

 

組織の破綻や器質的な緩みがなく、
拘縮、筋力の低下や収縮スピードの遅延、
痛みなどがありません。

 

関節の究極の「安定」は「固定」ということになります。

 

関節として「動かない」わけですから、
症状が出ることはありません。
(ほかの部分への影響は出る可能性あり)

 

臨床でよく聞く、関節固定術などは、
痛みを取り除くための究極の方法ですが、
固定された関節は「一つの骨」になりますから、
もはや関節ではなくなります。

 

「安定」した関節では、適正に“支点”が維持されている状態ですから、
運動をする時もこの適正な“支点”の中で運動軌跡が形成されます。

 

つまり、「安定」した関節とは、言い換えると
「正常な軌道の運動ができる関節」ということになります。

 

各関節にはそれぞれ特徴的な軌道があります。

 

このような「正常な軌道」で関節運動が遂行できている状態を「安定」、
「正常な軌道」から逸脱した運動を「不安定」ということになります。

 

「不安定」だからといって即座に痛みや可動域制限が出るとは限りません。

 

人間には一定の許容範囲(ハンドルでいうところの遊び)があり、
この範囲内で動いているのであれば、
多少の軌道の乱れは症状として出現しません。

 

しかし、許容範囲を超える不安定性は
痛みを引き起こします。

 

また、許容範囲内の軌道の乱れの存在は
将来的にはなんらかの症状を出す可能性があることは確かです。

 

その長期経過のなかで、
関節症やけがなどの運動障害の原因となった痛みが
出現すると考えられます。

 

関節の不安定性は、一度引き起こされると
なかなか改善しないものです。

 

ですから、関節の不安定性を引き起こす要素を
早めに改善して予防することが重要です。

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